3ヶ月後、ヤツは帰ってきた。再発という名のもとに……
気胸物語II
〜再発編〜
気胸で入院してからはや3ヶ月経ち、俺の中では気胸は『過去のもの』になりつつあった。11月17日夜、俺は珍しく勉強などしていた。
もうそろそろ寝ようかな、などと思っていたその時、異変は起きた…
「うっ!…こ、これはもしや…」俺はどこかで経験した感覚に、ぼんやりとした恐怖を覚えた。「だ、大丈夫だ…」などと思ってみてもその感覚は次第にはっきりしてくる。またヤツがやってきたのだ。
『再発』。
俺の頭の中はその二文字で埋め尽くされていた。「一度なったら50%の人が再発します。」などと言われていても、「俺だけはその50%には入らんだろう」と安心しきっていただけに、再発のショックは大きかった。
M病院に向かった。深夜なので主治医のI先生はおらず、かわりに坊ちゃん刈りの新米医師が診察した。
「うーん、これは気胸ですねぇ。」やはりか… じゃあまたあの管入れが待っているのか…
「ちょっと失礼。」そう言い残して坊ちゃん医者は奥へ引っ込んだ。なんか声が聞こえてくる。「僕管入れなんかできないよー。どうしよう。」えっ…どうしようってあんた… 坊ちゃん医者は周りの看護婦さんに相談しているらしい。 「ちょっと電話するわ。」ピッピッピ…「あ、もしもし!S先生ですか!あ、どーもいつもお世話になっております!じ、実はですね、気胸患者が来たんですが、僕管入れられないんで…どうすればいいでしょうか… …あ、はい、はい、はい…わかりました!ありがとうございます!では失礼します。」ガチャ。
坊ちゃん医者はすぐに戻ってきた。そして腕を組みながら偉そうにこう言った。「しばらく様子をみましょう。」
マジでーーっ!!? 俺の心の叫びも虚しく、俺は無処置のまま一般病棟のベットに寝かされた。
このまま寝たら窒息死するかも…と、恐怖に怯えながらも5分で寝てしまう俺であった。
翌日、俺は生きていた。息は苦しかったが、生きていると実感した。I先生によると、今回はあまりしぼんでないので管入れはしなくてよいのだそうだ。
俺は3日で退院し、1週間で気胸は完治した。だが、再発の恐怖はその後の俺をずいぶん苦しめたのであった。
そして2ヶ月後、また悪夢は蘇る……